全国の日本画を描かれる皆様。こんにちは!
また、日本画の描き方でお困りの初心者の皆様。ご安心ください
今回は150号日本画の制作過程をご紹介します。
完成作品 『松坂屋屋上の夕暮れ』2021年 院展出品作
今回は 本地裕輔の『150号の日本画の制作手順』をご紹介します。
トレース後は、ほぼ岩絵具での制作工程です。水干絵具はほとんど使っていません。
トレースの段階です。『均一な線』で描きます。
描き出しの段階で『線の抑揚』を出し過ぎると後々の隈取りがやりづらくなります。
下描きは「均一な線」が個人的には好ましいです。
おそらく、日本画家の山口貴士さん、岸本浩希さんもこの段階は均一な線で処理しているはずです。
私、本地裕輔の描き方は『隈取り』(くまどり)の段階で絵の方向性が9割決まるので大事な段階です。水で薄めた『うすい』しっかりした『こい』の2色の墨で描きます。
一番遠くの建物から描きます。この辺りの『場面』が一番細かく描き、そこを基準に細かさを調整します。モチーフが手前にくるほど、細かさは弱まります。
画面上3分の1ができてきました。遠景がしっかりすると、不思議と手前を描いてない状態でもなんとなく完成の雰囲気が見れます。
この段階では、和紙のままです。下地は塗っていません。
遠景から徐々に下に下がり、画面中心のメインとなるゲームコーナーを描きます。
この時も、最初に描いた左上のタワーマンションの細かさに対してどの程度になればいいのかを『比較』しながら描いていきます。
画面の下まで墨が入りました。画面の下はかなり『ひょろひょろ』描いています。気合をとにかく抜いて描きます。画面上部より『こい』墨は 画面下には使いません。
ともすると、『手前は濃い(こい)』と思いがちですが、『画面の見やすさ』を優先した場合に『画面下部』にはあまり鑑賞者の方の目が行かない方が『抜け感』が出ると思います。
なので、『コントラスト』をなるべく置きたくない場面でもあります。
岸本浩希さんや山口貴士さんの画面下の処理もそのような目で一度見てみるといいかもしれません。本当にさりげなく力を抜いて描いているはずです。
墨入れが終わりました。この段階で最終的な見え方を合わせています。
『刷毛でバサー』はこの段階ではしません。石膏デッサンの場合は
『大きく描いてから細かく描く』
のが常套手段ですが、日本画の場合は『細かく描いてから大きくつぶす』のが常套手段です。
黄色を入れます。黄色は白黒印刷にすると『白』になるので、白黒の段階の次にする仕事としては切り替えがスムーズです。例えば緑や青はその色自体の持つ明度が低いので画面のバランスが一気に変わるのでとんでもなく難しいです。黄色は鉛筆で言えば『3H』くらいの感覚です。(あまり画面に影響がない。)水彩の書き方指南書などでも黄色で最初の下地を作るのはそのためです。
おっかなびっくり黄色を置きます。画面のバランスは有彩色でも白黒に置き換えて考えるかが重要です。一旦『明度計画』が壊れると立て直しが難しいです。
まだまだ、おっかなびっくり色を入れます。
モチーフの『上面』(じょうめん)は質感を意識して薄塗りしています。
モチーフの『立面』(りつめん)(垂直の面)は構造を意識して水気を切って厚塗りしています。
この段階では水色が画面の中で『十時』を切るように描いています。(実際には水色でないところも水色にしています)なんとなく鑑賞者の目が十字に引っ張られることで、風景の縦横のダイナミックさを感じてほしいのでこのような処理をしました。
なんとなく仕上がってきました。描き進めても最初の『隈取り』の段階とのバランスは変わっていません。
大きな黒の位置は限りなく同じです。この『見え方』を維持しながら描くのは『色』を白黒に一度頭の中で変換することです。
ただ3段階くらいで構いません。
1 赤・青・紫は黒に
2 緑は灰色に
3 黄色は白に
このことを意識すると、描くのが楽です。
難しいかもしれませんがどうしても
明度 彩度 色相の3要素をコントロールするのは煩雑なので
色相(色合い)と明度を合わせてしまい
明度と彩度だけにしてしまうことでコントロールの仕事が減らせます。
初心者の方が例えば空に『群青』を塗ると『思ったより暗くて変な感じ』
ということがあるのはこの3要素がコントロールできていないからです。
なので本地裕輔の場合は思い切って色を捨てています(汗)
岸本浩希さんは天然のカラリストで中間色のコントロールは本当に
目を見張る部分がありますが、この明度のコントロールを軸にしていることで土台が安定し色の魅力を最大限に引き出していると思います。
バンドで言うところの『ベース』
家で言うところの『基礎工事』
野球なら『筋トレ』
に該当する部分ですかね。
仕上げにマスキングテープを貼った上から直線を描きます。
いろいろな幅のマスキングテープです。
いつも河合塾で講師をしていたときは夏期講習会の時に買って
加藤千奈先生に『こんなに買ったよー』と見せていました。。。
額をつけて完成です。 最後に『エックスライトカラーチャート』と共に作品を撮ります。
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