全国の日本画を描かれる皆様、こんにちは、本地裕輔です。
今回は、日本画の描き方でお困りの方に、本地裕輔の2022年第107回再興院展の入選した出品作の制作過程をお見せします。
日本画の描き方の1つのパターンではありますが是非、参考にしてみてください。

【写真上・完成作品】「栄・夜景遠望」
名古屋テレビ塔から街並みを見下ろした風景です。

【写真上・スケッチ】
まずは現場でスケッチです。何回か通いました。メモ程度のスケッチを現場で何枚も描いて描きたい場所を探します。とても風が強く人もいないので切なく描きました。

【写真上・小下図】
スケッチを基に日本画の岩絵具で小下図を描きます。大学のときから岩絵具で小下図を描いていましたが、色鉛筆や水彩ではやはり制作過程のイメージがしずらいかもしれませんね。
下地の透ける感じが1度ここで体験できるので日本画を描くときの制作工程の確認として大事な段階です。この時は1枚目の小下図は『ドロドロ』してしまったので、描き直しました。ちなみに本地裕輔の日本画の絵皿は管理を最低限にするために全部で11枚です。(日本画を描く人としては少ない方です。)多分山口貴士先生(クリックでInstagramにリンクします)は日本画の絵皿は100枚以上?!あると思います。

【写真上・描き出し】
基本的には風景画を描くときは『遠景』から仕上げます。一番細かくなる部分なので基準になる部分です。近景から描くと「基準」が作りにくいのでなるべく「一番奥にあるもの」から仕上げていきましょう。また、この描き出しの段階で遠景を「ぼかし」てしまうと、制作迷子になるのできっちり描き込みましょう!

【写真上・描き出し墨で大まかな見え方を作る】
遠景を中心に進めていきます。近景はほぼ「見え方のバランス」のみで遠景から描いています。

【写真上・墨入れ終了】
墨入れ(隈取り)完了です。
墨は、茶墨と青墨が一般的ですが、私の場合は定着がいい?!青墨を使っています。
鉛筆に例えると、『ステッドラー』で描くような感じです。

【写真上・群青であたりをとる】
いきなり岩絵具で描き出します。
「青色」は実際の明度よりも心理的に暗く見える色なので墨色とのギャップがなくスムーズに彩色に入れると思ったので、今回は初めに「群青」を置いていきます。

【写真上・金色を入れて群青とのバランスを見る】
この段階でも「画面上部」の遠景に手を入れます。青色の『補色』の黄色を入れたことで色彩のコントラストが出てきました。
日本画の描き方にもよると思いますが、初めから色彩を複雑に入れすぎると、明度が基準になる写実系の場合画面の秩序が乱れる可能性がかなり高いです。
「明度計画」をかなり綿密に練って
それを隠す?!ように色彩でコーティングしていたりする場合が多いかもしれません。

【写真上・研究会】
研究会で一度大学に行きました。(研究会の詳細はこちらをクリック)大学で一度作品を「突き放して」みると家での見え方では気づかない部分に気づいたりします。研究会は小雨でしたが藤城正晴さんにも会えました。

【写真上・研究会後の段階】
中心の明るい部分に金箔を貼ります。
描写した上に金箔貼ることで偶然性と描写の絡む感じを狙います。

中心に金箔を貼りました。
この後、雑巾で軽くこすって下地の岩絵具の描写を浮き上がらせます。

【写真上・マスキングテープを貼る】
最終的に初めに描いた窓の「線描き」が絵の具がはみ出たりしてずれてくるので、最後の段階でもう一度すみで線を頼りに描き直します。

【後半はほぼ画面を立ててかきます】
通常、日本画を描く時は岩絵具や墨が垂直に垂れてくるので「寝かせて描く」のですが、本地裕輔の場合は後半はほぼ立てて描くことが多いですが、
・画面の調子のバランスを見るため
・水が多めの薄い絵の具を塗り重ねて、マチエルを作る
ために後半は立てて描きます。

【写真上・仕上げは雑巾】
意外かもしれませんが、仕上げは雑巾で描きます。濡れた雑巾で下地の絵の具を出します。
なんだか色々な絵の具が混ざり合って予想しなかった色ができます。
自分でもここまで制御して描いているので最後に自分でも「どうやって描いたかわからない」状態にします。この段階がどうなるか予想できないので一番ドキドキします。

金色の額縁を横に置いて色合いを確認します。

【写真上・完成】
栄の街並みの光をイメージして描きました。人々のいとなみを感じれるような作品を目指しました。
#日本画描き方 #院展
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