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日本画Website 2025

【本地 裕輔】

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【日本画描き方】2025年・最新版 日本画家/本地裕輔が「13の工程」に分けて解説・院展インタビュー動画もあります。



初めまして、日本画家の本地裕輔(もとじゆうすけ)です。

日本画の描き方でお困りでこの記事を読んでくださっていると思います。

ありがとうございます。


以下13の工程で日本画の描き方を解説していきます。


【自己紹介】


  1. 【日本画のためのスケッチ】

  2. 【日本画のための水張り】

  3. 【小下図】

  4. 【大下図】

  5. 【膠(にかわ)の使い方】

  6. 【日本画の筆】

  7. 【胡粉(ごふん)の使い方】

  8. 【岩絵具の準備・お店で買ってみよう】

  9. 【日本画の描き方・序盤の墨入れ】

  10. 【岩絵具の塗り方】

  11. 【岩絵具のマスキング】

  12. 【金箔・銀箔を貼る】

  13. 【額装・展示しましょう】





日本画の描き方や技法、手順でお困りの全国の初心者の方は多いと思います。


今回はそんな「日本画の描き方」にお悩みの方に日本画の技法を紹介いたします。



【自己紹介】

まずは私、日本美術院(院展)所属で愛知芸大大学院卒業の

本地裕輔の日本画作品をご紹介します。


2022年「芙蓉」F8号


私、本地裕輔は普段はこのような日本画作品を描いています。

Instagramもやっておりますので日本画作品はそちらに全て載せてあります。


2022年・前田青邨記念日本画大賞展にて「雨牡丹」F50号 奨励賞を受賞いたしました。


今回は、日本画家・本地裕輔の日本画全般の描き方です。




1.【日本画のためのスケッチ】

基本的には、現場でスケッチをします。スケッチは透明水彩も使いますが

ほぼ鉛筆【HB】を使うことが多いです。

現場でのスケッチ。

本画に比べると線をかなり多く使います。本画ではほとんど線は描きません。


郵便の封筒にスケッチしました。木蓮です。

スケッチブック以外にも描きます。クラフト色の色が自然な風合いを出してくれます。


田んぼのスケッチ・こちらは水彩で描いています。


名古屋城のスケッチ。

天守閣の部分のみ色を塗りました。石垣との質感の対比を気にして描きました。


ダムのスケッチ。早朝の空気です。

この風景に限らずですが、早朝の青い色合いを花の絵と組み合わせたりします。


滋賀県・余呉湖でのスケッチ 水彩が思うようにのりません。。

過酷な中でのスケッチは本画にとっていきてきます。


自宅に戻り当日に加筆をしました。




【イギリスのスケッチ】

その時に感じた、風や温度光の印象などを体で記憶することが大切です。

スケッチを基に本画になります↓


現場でのスケッチ。印象的な部分のみ水彩を塗っています。

【イギリスのスケッチをもとに本画】

その時に感じた、風や温度光の印象などを体で記憶していることが大切です。





2.【日本画のための水張り】


日本画を描くときに使う紙は多くの大学や公募展では

「雲肌麻紙」や「高知麻紙」多く使われます。


●写真上 10号サイズの水張りの様子です。

スケッチを終えて、日本画を描く前にまず初めに行うのが「水張り」です。

四角に空気が入るとシワになるので、空気が入らないように注意してください。


【水張りのコツは以下の2点】

・水を均一になるようにたっぷり使うこと

・空気が入らないようにシワを伸ばすこと


張り込んだ段階で、四つかどが浮いていなければ水張りはほぼ成功です。



和紙を少し大きめに張り込んでから、側面をカットします。

紙が「ほどほどに」伸びた状態で貼るのがコツです。

あまりパンパンだと冬場は画面が裂けることがあります。

シワの無いように気持ちよく水張り下画面で日本画を描きましょう!





3.【小下図】


写真上・日本画の小下図です。

スケッチの次の段階は小下図です。

この作品はB5くらいのパネルに描いていますが、150号の下図なので岩絵具でしっかりと描きます。

日本画は途中で大きな色や形の変更ができないので比率の同じ小さな下図の「小下図」で大きなバランスや制作過程を確認しておきます。






4.【大下図】

大下図

150号の大下図です。

3B位の鉛筆で描きます。日本画の大下図は主に「線」で描きます。

大下図のトレースの時に「線画き」しか写らないので調子はフォルムの確認程度で

線で形を作っていきます。

 150号2014年・院展出品作『遠くへ』

大下図の線とほとんど変更ないと思います。



写真上・2014年春の院展出品作「鷺山彩雪」真ん中あたりが下の写真です。



●写真上 

大下図トレース後の部分拡大写真です。

大下図はこのようにほぼ

『線描き』で構いません。

●この大下図の場合は、

『隈取り』で混乱しないように、よく見ると

植物の葉の『調子の強い』部分に「バツ印」を描いています。


●大下図は本紙に移す時に『調子』は移せないので、1本調子で抑揚のない線が向いています。

「あたり」や、大まかなボリューム感を確認するために、「調子」を入れた方が画面が見やすい場合もあります。






5.【膠(にかわ)の使い方】

一般的な三千本膠(さんぜんぼんにかわ)を用いる作り方。

「飛鳥」という名前の膠を使用します。


⚫︎膠1本の約10gを「タオル」などに包み細かく折る

(直接「膠」を折ると破片が多く飛び散り大変危険です)


⚫︎水50~100ccを容器(膠鍋)に入れ、直火を避けボウルや鍋を使用し湯煎で溶解します。

飴色になるまで溶かしますが、沸騰してしまうと「タンパク質」が壊れてしまい画面に付かなくなります。


⚫︎使用後は冷蔵庫で保管します。

夏に二日

冬は三日程度は腐らずに使えます。





6.【日本画の筆】


写真上

日本画家・本地裕輔が実際に使っている筆です。


日本画のおすすめ筆は主に


⚫︎連筆

⚫︎即妙筆(得慶軒)

⚫︎刷毛

⚫︎鼬(いたち)長峰面相筆

色々な日本画のおすすめ筆があると思いますが

「描写系」では「即妙筆」が穂先がきくのと、絵の具の含みが良いので

筆の中でも特におすすめの日本画筆です!

(水彩でも使用できます)


【刷毛】

 ●日本画を描くときの「刷毛」は、3センチ程度の小さな刷毛から25センチくらいの大きなものまで様々な大きさがあります。

作品サイズに合わせて使い分けます。


10号までの作品であれば、幅が10㎝くらいの刷毛で良いかもしれません。



7.【胡粉(ごふん)の使い方】


胡粉は、白色顔料です、貝殻(ホタテ・牡蠣・ハマグリ)

の貝殻から作られています。

貝殻を10年程度、貝塚のように天日干し多物を

砕いて絵の具に精製します。


胡粉には様々な種類があり

花胡粉(はなごふん)

白寿(はくじゅ)

飛切(とびきり)

金鳳(きんぽう)


の順番で精製度合いが変化します。

細かいほど「割れやすい」ので

私は好んで花胡粉で描いています。


胡粉を使うときは乳鉢で細かく砕きます。

しっかりとサラサラの粉状になるまで細かくします。

まとまった胡粉をお皿でにかわと混ぜ合わせて「百叩き」します。



また、胡粉の「保存」には湿度がない場所での保管が大切です。

溶いた胡粉は保存できません。


チューブタイプの胡粉との違いはチューブ胡粉は

膠がとても弱くすぐに動いてしまいます。

静物着彩ではチューブ胡粉が多く使われているのは

そのためです。





8.【岩絵具の準備・お店で買ってみよう】

「岩絵具」はお店で買うと「ビニールの袋」に入っていますが、粉末状なので中の色味を確認するために「ガラス瓶」に詰め替えています。


日本画の画材の『岩絵具』です。

岩絵具には「番手」がありますが、使いやすいのは9番以降13番までくらいでしょうか。


本地裕輔が使っているのは写真の「球体のガラス瓶」です。

これに『6両』入ります。

(名古屋市中村区にて製造されている瓶です)

日本画を描く際には「水干絵具」と「岩絵具」を、併用します。



 岩絵具を絵皿に出したところ。見ているだけで楽しいですね。


写真上・名古屋の日本画画材屋さん『森荘』です。

たくさんの岩絵具が並んでいます。

日本画筆も様々な種類がありますね!日本画におすすめの筆は森荘の

ベテランの店員さんが親身に教えてくださいますよ。



●絵の具は日本画の画材屋さんでは、1両単位で販売されています。

1両が約15グラムです。

お店で買うときは日本画の「岩絵具」は量り売りです。

1両=15gという単位で値段が決まります。200円位から4000円くらいまで

素材によって値段が大きく変わります。

写真のような「はかり」です。欲しい量を伝えてください。


岩絵具を買う時ですが

コチニールなど粉末状の染料系の「軽い絵の具」は『半両』(7・5g)買いもできます。



9.【日本画の描き方・序盤の墨入れ】

 ●写真上 日本画の描き方で、最初に行う『墨入れ』

です。いわゆる『隈取り』ですが、

『隈取筆』を意外にも使いません。なぜなら隈取り筆で描くと「先がバサバサ」しやすいので最初から先の効く筆「則妙筆」で隈取りします。


●ポイントは、『薄墨』『濃墨』『水』を、使い分けることです。

墨はすぐに乾いてしまうので『ぼかし』にあまり時間をかけると、『にじみ』や、『調子の失敗』になります。



●濃い墨と薄い墨が、すぐ分かると、失敗?が減らせます。





10.【岩絵具の塗り方】

 写真上

岩絵具での『下地』です。

この段階で芙蓉の花はほとんど紙の地です。

花びらは、絵の具をのせすぎると「重く」なってしまうので最小限の手数で仕上げます。

反対に、背景や葉っぱはたくさんの絵の具を使うことで花びらとの「差」ができます。


背景には絵の具を流して「さざなみ」を作っています



●この描き方は日本画の描き方の本などでは、通常はあまりオススメされていませんが、

違う番号も平気で混ぜます。写真上の11番と13番の配合などはよく使います。

(院展系の技法書ではよく解説に出てくる混ぜ方です)

 


【岩絵具を混ぜるメリット】

1、岩絵の具の盛り上がり方に「複雑味」が出る

2、岩絵の具の『混色』でしかでない色がある。

3、水を多めにすると「さざなみ」ができる。

(※写真上・芙蓉の背景部分の表現)


 


●混色した岩絵の具を塗る場合、

皿の中で岩絵の具を『かくはん』して塗るのが原則です。

時間が経つと番号が分離してしまいます。 

日本画筆は色々なメーカーがありますが、

『得應軒』(東京)

『清震堂』(東京)

『不朽堂』(東京)

『ナムラ』(京都)

が、多く使われます。


院展 出品作品


混色した岩絵具を

たくさん使って描きました。


※日本画を描く場合は刷毛も、なるべく『漆塗り』の刷毛がオススメです。

木のむき出しの刷毛は、傷みやすい気がします。



 

●写真上 『サーキュレーター』も大活躍です。

 

●日本画の描き方の中では『ドライヤーの温風』は使いません。

ドライヤーの温風は『しみ』や『岩絵の具のひび割れ』の原因になるので、自然乾燥が一番です。



●ドライヤーは岩絵の具の表面が先に乾き、中のにかわが外の絵の具を引っ張り、田んぼのひび割れのような現象が起こるためです。

 

●どんなに急いでいても、温風は使わないのが良いです。『うちわ』もたまに使います。


日本画では、赤色に『コチニール』を使ったりします。写真上の作品、鶏のトサカ部分は

コチニールです。

虫の持つ染料で独特な発色をします。薄塗りを重ねると奥行きのある深い色合いが出ます。



写真上 完成作品

ほぼ岩絵具で描きました。

この段階でも花はほとんど紙の地です。

花は、絵の具をのせすぎると表現が「重く」なってしまうので最小限の絵の具で仕上げます。

背景や葉っぱはたくさんの絵の具を使いました。



写真上、「水仙」大きさ・サムホール

こちらは完成の状態です。

水仙の花びらの白い部分は「薄い墨」だけです。

花は紙の地を活かして描く場合が多いです。




11.【岩絵具のマスキング】


●【マスキングテープ】も、日本画の描き方で実は岩絵の具で『直線』を描くのはとんでもなく難しいので、モチーフによってはマスキングする描き方もあります。



『溝引き』は墨ならできますが、『岩絵の具の溝引き』はあまり向いていないと思います。写真上の日本画では、建物の柱の部分をマスキングして形を修正している段階です。






12.【金箔・銀箔を貼る】


●写真上 岩絵の具の上に銀箔を貼ったものです。

 箔が絵具で盛り上がった状態です。箔を貼った後に『濡れ雑巾』で箔をこすり落とした状態です。岩絵の具の『隙間』に箔が残る技法です。

●日本画の描き方には、色々な技法がありますが、この描き方は箔の面白い効果が得られると思います絵の具が膠でしっかりついていないと絵の具が取れてしまうので注意が必要です。



●この描き方の際に、『アルミ箔』は、細かい粉を吸うと、病気になるかもしれないので、アルミ箔はあまりオススメしません。




●画面上の写真も大作で最後に濡れ雑巾で金箔をこすって仕上げています。


建仁寺の風神雷神屏風を解説する山口貴士先生(2024年12月松坂屋美術館にて)

この金箔をうまく作品に取り入れています


13.【額装・展示しましょう】


額装をして、作品を展示しましょう。

額装は主に「作品の保護」が目的です。

公募展や個展などで描いた作品を見ていただくと、次の作品の展開につながるかもしれません。なかなか絵を見せるのは恥ずかしい時もあるかもしれませんが、まずは

親しい友人や身内の方などに見てもらい、少しづつ自信をつけていけると

良いかもしれませんね。





本地裕輔による日本画家への

YouTubeリンクはこちら↓



 




名古屋池下でも

日本画を習える絵画教室があります。