日本画の描き方や技法、手順でお困りの全国の初心者の方、多いと思います。
今回はそんな「日本画の描き方」にお悩みの方に技法を紹介いたします。
まずは私、日本美術院(院展)所属で愛知芸大大学院卒業の
本地裕輔の日本画作品をご紹介します。
2022年「芙蓉」F8号
2022年・前田青邨記念日本画大賞展にて「雨牡丹」F50号 奨励賞を受賞いたしました。
今回は、日本画家本地裕輔の日本画全般の描き方です。
1つの作品の工程は別の記事にてお読みください。
写真上
通常の日本画の描き方は「スケッチ」→「小下図」→『大下図』→『トレース』→『隈取り』→『本画』
ですが
『隈取り無し』バージョンの描き出しです。いきなり岩絵具で『あたり』をとるやり方です。芙蓉の花はほとんど紙の地です。
写真上・日本画の小下図です。
この作品はB5くらいのパネルに描いていますが、150号の下図なので岩絵具でしっかりと描きます。
基本的には、現場でスケッチをします。スケッチは透明水彩も使いますが
ほぼ鉛筆【HB】を使うことが多いです。
現場でのスケッチ。
本画に比べると線をかなり多く使います。本画ではほとんど線は描きません。
田んぼのスケッチ・こちらは水彩で描いています。
ダムのスケッチ。早朝の空気です。
この風景に限らずですが、早朝の青い色合いを花の絵と組み合わせたりします。
滋賀県・余呉湖でのスケッチ 水彩が思うようにのりません。。
過酷な中でのスケッチは本画にとっていきてきます。
自宅に戻り当日に加筆をしました。
【イギリスのスケッチ】
その時に感じた、風や温度光の印象などを体で記憶することが大切です。
スケッチを基に本画になります↓
写真上、「水仙」大きさ・サムホール
こちらは完成の状態です。
水仙の花びらの白い部分は「薄い墨」だけです。花は紙の地を活かして描く場合が多いです。
以下より解説です。
今回は
日本画画材や、岩絵の具、箔の使い方などを解説いたします。
写真上・春の院展出品作「鷺山彩雪」の大下図の真ん中あたりが下の写真です。
●写真上
日本画の基礎となる『大下図』の部分拡大写真です。
大下図はこのようにほぼ
『線描き』で構いません。
●この大下図の場合は、
『隈取り』で混乱しないように、よく見ると
植物の葉の『調子の強い』部分に「バツ印」を描いています。
●大下図は本紙に移す時に『調子』は移せないので、1本調子で抑揚のない線が向いています。
「あたり」や、大まかなボリューム感を確認するために、「調子」を入れた方が画面が見やすい場合もあります。
●写真上
日本画の画材の『岩絵具』です。
本地裕輔が使っているのは写真の「球体のガラス瓶」です。
これに『6両』入ります。
(名古屋市中村区にて製造されている瓶です)
日本画を描く際には「水干絵具」と「岩絵具」を、併用します。
写真上・名古屋の日本画画材屋さん『森荘』です。
日本画の「岩絵具」は量り売りです。
1両=15gという単位で値段が決まります。
●写真上 10号サイズの水張りの様子です。
日本画を描く前にまず初めに行うのが水張りです。
和紙を少し大きめに張り込んでから、側面をカットします。
紙が「ほどほどに」伸びた状態で貼るのがコツです。
あまりパンパンだと冬場は画面が裂けることがあります。
●絵の具は日本画の画材屋さんでは、1両単位で販売されています。
1両が約15グラムです。
ちなみにコチニールなど軽い絵の具は画材屋によって『半両』買いもできます。
表現によって、岩絵の具の細かさを変えます。
●そのまま岩絵の具を使うこともありますが、私の場合ですが、大抵は番手を変えてブレンドして、混色して色を作ります。
●この描き方は日本画の描き方の本などでは、オススメされていませんが、
違う番号も平気で混ぜます。写真上の11番と13番の配合などはよく使います。
メリット
1、岩絵の具の盛り上がり方に複雑味が出る
2、岩絵の具の『混色』でしかでない色がある。
3、水を多めにすると「さざなみ」ができる。
●混色した岩絵の具を塗る場合、
皿の中で岩絵の具を『かくはん』して塗るのが原則です。
時間が経つと番号が分離してしまいます。
日本画筆は色々なメーカーがありますが、
『得應軒』(東京)
『清震堂』(東京)
『不朽堂』(東京)
『ナムラ』(京都)
が、多く使われます。
※日本画を描く場合は刷毛も、なるべく『漆塗り』の刷毛がオススメです。
木のむき出しの刷毛は、傷みやすい気がします。
●【マスキングテープ】も、日本画の描き方で実は岩絵の具で『直線』を描くのはとんでもなく難しいので、モチーフによってはマスキングする描き方もあります。
『溝引き』は墨ならできますが、じつは『岩絵の具の溝引き』はあまり向いていないと思います。写真上の日本画では、建物の柱の部分をマスキングして形を修正している段階です。
●日本画を描くときの「刷毛」は3センチ程度の小さな刷毛から、25センチくらいの大きなものまで、様々な大きさがありますので、作品サイズに合わせて、使い分けます。
10号までの作品であれば、幅が10㎝くらいの刷毛で良いかもしれません。
●写真上 日本画の描き方で、最初に行う『墨入れ』
です。いわゆる『隈取り』ですが、
『隈取筆』を意外にも使いません。なぜなら隈取り筆で描くと「先がバサバサ」しやすいので最初から先の効く筆「則妙筆」で隈取りします。
●ポイントは、『薄墨』『濃墨』『水』を、使い分けることです。
墨はすぐに乾いてしまうので『ぼかし』にあまり時間をかけると、『にじみ』や、『調子の失敗』になります。
●濃い墨と薄い墨が、すぐ分かると、失敗?が減らせます。
●写真上 岩絵の具の上に銀箔を貼ったものです。
箔が絵具で盛り上がった状態です。箔を貼った後に『濡れ雑巾』で箔をこすり落とした状態です。岩絵の具の『隙間』に箔が残る技法です。
●画面上の写真も大作で最後に濡れ雑巾で金箔をこすって仕上げています。
日本画家・山口貴士さん(クリックでInstagramにリンクします)もこの金箔をうまく作品に取り入れています
●日本画の描き方には、色々な技法がありますが、この描き方は、ちょっと難しいのですが、岩絵の具に慣れてきたら、やってみてください。箔の面白い効果が得られると思います。
●この描き方の際に、『アルミ箔』は、細かい粉を吸うと、病気になるかもしれないので、アルミ箔の値段は安いですが、オススメしません。
●写真上 『サーキュレーター』も大活躍です。
●日本画の描き方の中では『ドライヤーの温風』は使いません。
ドライヤーの温風は『しみ』や『岩絵の具のひび割れ』の原因になるので、自然乾燥が一番です。
●ドライヤーは岩絵の具の表面が先に乾き、中のにかわが、外の絵の具を引っ張り、田んぼのひび割れのような現象が起こるためです。
●どんなに急いでいても、温風は控えます。
『うちわ』もたまに使います。
日本画では、赤色に『コチニール』を使ったりします。
虫の持つ染料で独特な発色をします。薄塗りを重ねると深い色合いが出ます。
以上 日本画の描き方でした。
院展 出品作品
本地裕輔による日本画家への院展のインタビューもしています。
YouTubeリンクはこちら↓
【2022年・秋の院展】松坂屋美術館にて・画像クリックで動画を再生します。
【2022年・春の院展】松坂屋美術館にて・画像クリックで動画を再生します。
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