山口貴士先生がファシリテーター(発言を受け止める進行役)となり「対話型鑑賞」が名古屋院展にて開催されました。
院展では初の試みだったそうです。
結果は*大盛況*でした。
参加者の方々が目の前の作品について「ざっくばらん」に山口先生と対話形式で深く掘り下げ様々な「気づき」があり、会場が盛り上がりました。
【対話型鑑賞とは】
「対話を重ねて作品を深く掘り下げる」という美術鑑賞の方法です。
【VTS】
「VTS(ビジュアル(視覚)・シンキング(思考)・ストラテジー(戦略)」
「観て考えて」を繰り返すことで「新たな気づき」まで辿り着く鑑賞方法です。
雑巾の最後の一滴まで絞りだす感覚でしょうか。
対話型鑑賞によって、絵画の3第要素である「色彩」「マチエルの質感」「形」などの絵画の要素を汲み取る視点や、それを言葉に置き換える能力が培われます。
⚫︎実際に風神雷神では
・怖い
・雷
・色数が少ない
・金箔表現
という回答の最後に
山口先生が風神雷神の中心の余白は「千手観音の光」の後光で見えなくなっている。
との掘り下げにまで到達しました。
対話型鑑賞の最大のメリットは、作者や年代、絵画技法などの専門的な知識に傾倒しすぎないという点です。
これまでの美術教育では、作品や作家に対する知識を『琳派』「バルビゾン派」「野獣派」・・・などと覚える教育が多かったのではないでしょうか。
私は好き?!なので苦痛にはなりませんでしたが、無味乾燥な知識の受け売りは美術が嫌いになる原因の一つでもあるかもしれません。(美術が嫌いになる原因はデッサンで形が取れないこともあるようですが・・)
今回は小学生や年中さんの子供の参加もありましたが、自由な発想で観念(先入観・バイアス)に囚われずに答えていました。
まず「正解」は無いという部分が対話型鑑賞の根っこになっています。
“正解”が存在してしまうと「間違っては恥ずかしい」「読み取りが不十分」という思いが鑑賞のさまたげとなり発言の自信を無くしてしまいますが、前提として“正解”は無いことを共有する点からスタートしました。
文化勲章を受賞された田渕俊夫先生が愛知芸大での研究会で
鑑賞は「最後は観る人が完成させてくれます」とのお言葉がありましたが。
日本画の余白の表現や色数の制限などはまさに鑑賞者の想像によって完成させられる部分ではないでしょうか。
対話型鑑賞はその思考経路を明確にしていく鑑賞方法でした。
子供の発言は自由で
「お化けがいる」
「学校から帰ってきたところ」
「迷っている?!」
などこちらからは発想ができない切り口を与えてくれました。
絵画の鑑賞のパラダイムシフト(時代を変える)が対話型鑑賞に潜んでいるような気にさえなりました。
面白かったポイントとして、
意見が一通り出た状態で「さらに」意見を出す構成が面白かったです。
意見が出尽くした後は「これ言っていいのかな?!」みたいな意見も出る場面が観られました。恥ずかしさや間違いの無いという 「場の空気」の心地良さがファシリテーターの山口先生の手法というと大袈裟ですが、終始和やかな雰囲気でした。
とても建設的な意見の積み重ねがリアルタイムで行われる場面は参加者の皆さんの心に残ったのではないでしょうか。
最後に坂根輝美さんの作品の対話型鑑賞では
月や星などの隠れている部位や描かれた女性の目線の方向、現実の色味で描いていない?など色々な意見が出ました。
ファシリテーターの山口先生がこれらの意見を総合的にまとめながら
3点の院展日本画作品の対話型鑑賞が実施されました。
教育的効果も高いと感じました、また鑑賞者側が自分の興味が「色」「質」「形」「全体・部分」「雰囲気」など興味がどこにあるのかを言語化して再認識したり、山口先生の意見からさらに別の見方になったりするなど、対話が生き物のような変化をしていく様がとても面白かったです。
対話型鑑賞はさまざまな美術館でのワークショップやオンライン講座などで開催されています。
院展の山口貴士先生の対話型鑑賞をきっかけに、興味をもたれた方はぜひ体験してみてください!
山口貴士先生の作品はこちらからリンクしています
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#院展
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